今日はかんねどんの神主さまば、えらかさした話ばしゅうだい。 (酷い目にあわせたという話をしましょう)
かんねさんの、西隣には、お伊勢様ン札所ちゅう処ンあって
そこの神主様は、お伊勢様に詣りに行きたい人を集めて
伊勢講という講を作って世話をしていたという。
だけど、この神主様は愛敬がないもので
かんねさんとちょくちょく喧嘩をしていました。
明日は、浜崎のお諏訪様ン供日(くんち)という朝がた
かんねさんと神主さまは、鳥居の前で
立ち小便をしたか、しないかで喧嘩をしたという。
だから、かんねさんは1日中腹きゃあちょらしたちゅう。 (腹をたてていたという)
その日の夜、神主様は朝の喧嘩など忘れて
かんねさんの処に来て、
「かんねどん、明日は浜崎のくんちじゃるけん (かんねどん、明日は浜崎のくんちだから
わりも行くとじゃろう。 お前も行くのだろう
おいも行こうち思うちょるけん 俺も行こうと思ってるから
ちょっと頼まれてくれんけ ちょっと頼まれてくれないか
おりゃ、われん知っとるごて 俺は、お前も知っているように
朝寝ばするけん、 朝寝坊するから
われん起きた時、声ばかけちくれんけ」 お前が起きた時、声をかけてくれないか」
と、頼んだそうです。
「神主ん奴、朝ンうち、おりば怒っちょるこつぁ (神主の奴、朝俺を怒ったことなど
忘れっしもち」 忘れてしまって)
と、ムッとしたけれど顔には出さず
「声ばかくるとな。よかたい」 (声を掛けるんだな、いいよ)
と、引き受けました。
あくる朝、神主様が目を覚ますと、雨戸の隙間から
強い光が差し込んでいました。
「かんねに、あぎゃしこ頼んじょったとけ、つまらん奴バイ」 (かんねに、あれほど頼んだのに、つまらない奴だ)
と、腹かかしたちゅう。 腹をたてたという
ぷりぷり腹きゃあち雨戸ばあけたら ・・・・・・ ぷりぷり腹をたてて、雨戸をあけたら
糞ン臭いのぷんぷんしたちゅう
「こりゃ臭か、だいが家ン前に糞ばたいかぶったしゅう」 (これは臭い、誰が家の前に糞をしたんだ)
と思って、戸口に出てみると・・・
家ン前ンにきゃ、こえたご ばひっくり返したごて (家の前には、肥料桶をひっくり返したように
糞ン散らばっちょったちゅう。 糞が散らばっていました)
「だいが、こぎゃんか悪さばしたとか!」 (誰がこんな悪さをしたんだ!)
といって、顔を真っ赤にして腹かかしたちゅう 腹をたてたという
夕方になって、かんねさんは供日酒でよか気色になって くんちの振舞い酒でいい気持ちになって
神主様ン家ン前ば通りかからしたら 神主様の家の前を通りかかると
神主様と会いました
すると、神主様は気色ン悪かこつばっかいじゃるけん 神主様は気分が悪いことばかりだったから
かんねをつかまえて、
「かんねどん、わりゃおりば、だまくらかしたな! (かんねさん、お前は俺をだましたな!
あぎゃん頼んじょったとけ あんなに頼んだというのに
なんで、声ばかけちくれんじゃったけ!」 なぜ、声を掛けてくれなかったんだ!)
と、かんねさんにやかまし言わしたちゅう。 文句を言いました
すると、かんねさんは
「おりゃ、われん頼んだごてしたばい (俺は、お前に頼まれたようにしたよ
ちゃんと肥ばかけちょったばい ちゃんと肥をかけておいたよ
見てんけ、そこンにきン肥はおいがかけたつばい」 見てみろ、そのあたりの肥は俺が掛けたんだよ)
と、しゃあしゃあと答えました。
「こりゃしもた!かんねにやられたばい」 (これは、しくじった!かんねにやられた)
と、気が付きましたが文句も言えずに
泣き寝入りしました。
今日ン話は、こいばっかい。
神主さんに、復讐するとは・・・、とんだバチあたりです。
声(こえ)と肥(こえ)・・・発音は一緒ですが・・・
信じられない男です。
次回のかんねさんの活躍?をお楽しみに!