今日は、かんねどんの、和尚さんを半剃りにしたって話です。
今日は、二十日えびす様の日だから、唐津の町には、
出店が一杯出て、賑やかだったらしい。
大石町の若者たちは、農業が暇な時期なので
五、六人で連れだって、町に遊びに来ていました。
狂言を見たり、出店をひゃきゃあたりしたいどん (冷やかしたりしたんだが)
暇が在りすぎて、なんして遊ぶぎゃよかか (なにをして、遊んでよいか)
わからんごてなって、大手口ンにきに集まって (わからなくなって、大手口の近くに集まって)
ぼさっと、しとらしたちゅう。 (ぼんやりしていたらしい)
「何でん見てしもうたけん、暇ン余って (みんな、見てしまったから、時間があまって
どぎゃんしゅうでんなか。 (どうしようもない)
何か、面白かこつンなかじゃろか。」 (何か、面白いことはないだろうか?)
と、誰かが言ったらしい。するともう一人の若者が
「そうな、あんまいわあかこつもされんけん、 (そうだな、あまり悪いことも、できないし)
今かりどぎゃんしゅうけ」 (今から、どうしましょうか)
といって、お互い顔を見合わせていた。そこに・・・
かんねさんが、現れた。
「また、好かんとん来たバイ、かんねんくっと (また、嫌いな奴が来たよ。かんねが来ると)
ろくなこたぁなかばい」 (ろくなことがない)
と、若者達は、顔をしかめたらしい。
若者達は、ちょくちょくかんねに騙されてるので
かんねに会うのを嫌っていました。
貧乏で銭を持たないかんねさんは、祭だから
町に出てきましたが、金なしでは、何も遊べませんので
何か、いい獲物はいないだろうかと、算段しながら
来ていましたので、若者を見つけると
「こりゃ、よか獲物ンかかったばい」 と思いました (これは、よい獲物が、かかったぞ)
だから、すぐに声をかけたらしい。
「われたちゃ、何しよるとけ!銭も持たぢ、 (お前達は、何をしてるんだ。銭も持たずに)
徒然なかろうが」 (退屈だろうが)
すると、若者たちは、ムっとして
「何ちゅうこつばいうとけ、わりが銭ば
でゃあちくるっわけんなかくせ、いらんこつたい」 (何を言っているんだ、お前が銭を出してくれるわけがない。 いらぬ世話だ)
と、言い返しました。 だけど、かんねも負けずに
「銭ゃ持たンでん、面白かこつンあるとば、 (銭は持ってなくても、面白いことがあるのを)
わりどみゃ、知るみゃあもん」と、いいました。 (お前達は知らないだろう)
すると、人のいい若者達は
「面白か話ちゅうた、何け」 (面白い話とは、なんだ)
と、かんねさんに訪ねたという。
すると、かんねさんはもったいぶって、
「ただじゃ、いわれんばい。酒ば一升賭くんなら
いうてんよか」 (無料では教えない。酒一升賭けるなら言ってもいいが)
と、賭けの話を持ちかけました。
つづく
ん~ん、我等がかんねさん、話の進め方が非常にうまい!
現在に生きていたら、すごい詐欺師になっていたでしょう。
まず、貧乏ということはないはずです。